【山 域】北アルプス・白馬岳 白馬主稜
【日 付】2009年5月1日(日帰り)
【時 間】猿倉 3:45 主稜八峰 7:00 七峰 7:15 六峰 7:35 四峰 10:10
三峰 10:35 二峰 11:00 白馬山頂 11:35~12:15 白馬尻 13:25 猿倉 14:40
【メンバー】単独行
次は、小屋からすぐ上に出る路が分からず、エーイ邪魔くさい直登するぞ、と少々木登り。気合い入ってる。
それからは、アイスバーン状態の暗がりの林道を快調に歩いていく。登攀具がないのでザックは軽い。
20分ほど歩くと先行2名パーティが見えた。ではあとルート案内は御願いします、とばかりにヘッドランプを消して歩く。
金山沢の出合は、暗くてよく分からないが雪は繋がっていない様子で、本流はゴウゴウとスゴイ水の音がしてる。
その先で径が斜面をトラバースしているところで、早くもアイゼンを付けた。懐かしき、タニーの10本歯アイゼンだ。今日一日よろしくね。と挨拶しながら装着した。
白馬尻は文句なく雪に埋まっているが、それでも一昨年テントを張ったところがよく分からないほど雪は少ない。
八峰への登り
先行の2名は、白馬尻を左岸に渡って、主稜の取り付きの傾斜がきつくなりだすところで休憩を入れたので、あっさり追い越させてもらった。
きっと本日の先頭を行かせてもらえるのだろう。
5~60m程急斜面を登ると少し傾斜が落ちる。通常はそのまままっすぐ八峰を目指すのだろうが、一昨年の経験でココは右へ右へと登っていき、白馬沢を覗きながら進める尾根をゆく。
ここなら足の裏全体を雪面に置いた歩きができる。この尾根に出ずに直登すると傾斜がきつく踵を雪面に付けては登れない。
この巻径ルートから直登ルートに合流した少し先の雪の解けた小さなガレ場に単独行の40歳ぐらいの人が居た。
オーアンタもやるね、気が付かない間に私を抜き去るなんて。
結局この人は、強く、主稜の登りでは、最後まで距離を開けられる一方だった。逆に、先ほど抜かした2人組は遅い遅い。
すぐ先に八峰が見える。ようしもう一息頑張るか、と登ってみるとまだピークは先だった。
こんなニセピークが3~4回ぐらいあって、ようやく八峰に。
八峰から見る七峰
さすが八峰と言うだけあって、少し先は軽いコル状に下っているので、主稜全体から本峰まで見通せる。
が、「何っ?!」と驚くほど本峰は遠くて遙かに高い。
「えっ?!」と信じがたく今登ってきた猿倉の方を見ると、この疲れに見合うだけの遙か下の方である。
慌てて地図を出して見た。猿倉の標高1230m、ここ八峰2237m。この疲労感に見合う1000mの登りだった。
しかし、白馬の頂上は2932m。まだあと700mも登らねばならない。ガーン、体力持つかしら?
八峰まで登れれば、あとはチョコチョコと楽しい雪稜歩き、と思って頑張ってきたのに、本峰があんなに遠くて高いとはえらいことになってきた。
ともあれ、ここまで来たら登るしかない。呼吸が整ったら、ゆっくり行きますか。
とは言え、この先、途中放棄して急な斜面を大雪渓か白馬沢へ降りてしまおうかと何度思ったことか。
この8峰まで来ればあとの登りは大したことないと勝手に思い込んで頑張ってきただけに、体力の使い方が半端じゃない。
もうあんまり力残ってない。
そう言えば、後続の2名は見えないな~。
七峰から見る八峰
七峰から見る六峰
8峰の先はほんの少しなだらかに下って7峰へと続く。
ルートは大きなバケツが続くので間違いようがないし、あまりに見事なステップなので不安感もないが、逆に、百歩中百歩足の置き場が固定されているので自由な雪山の面白さもない。
六峰から見る主峰
六峰から見る七峰と八峰
6峰は、細くて急な雪稜である。途中2~3手這松の根を持って登るが、難しいところはないがあまりに急で痩せているので気持ちいいと言う感じでもない。
終始雪は繋がっている、と言うことは例年より雪は多い?少なくとも4月に入ってからは融けるより積もる雪の方が多かったに違いない。
五峰途中から見る六峰と七峰
四峰から五峰へ続く雪稜
次の5峰も4峰もかなり遠い。長い雪稜とピークへのキツイ登りとなって続いている。
三峰から見る二峰と主峰
二峰の取付きの露岩を越える先行3人パーティ
3峰まで来ると、その先の小コルから2峰への取り付きでロープを出して、酷く苦労している3人パーティが居た。
彼らは昨夜この主稜上で泊まったらしく、荷物も大きいのを担いでいる。
暫く様子を見ながら休憩していると、別の2人パーティが主峰への雪壁を確保しながら登っていた。
雪庇の下で後続を確保しているが、「オイオイ本当にそんなところで確保していて大丈夫?」という感じに見えるところだ。
少々遠いので詳しくは見えないが、ともかくやばそうだ。
さて目の前はわずか3~4m程の高さを登るのにザイルを出すのはいいが、少々時間掛かり過ぎじゃない?3人目が登り始めたので、ザックを担いで3峰からコルへと歩き始めた。
コルは少し岩が見えているところがあって、ツララを一口戴いてから左手雪面を越えていった。確か記録では、2峰の登りで岩稜とか言う字を見た記憶があるが、相も変わらずピッケルアイゼンの世界だ。
二峰の取付きから見る主峰の雪壁
その2峰への登りの途中で先行の3人パーティに先を譲ってもらった。
2峰に着くと目の前が、最後の雪壁。そこを朝抜かされた人が登っている。
その人が登りきったのを確認して、最後の壁に取付いた。が、さすがに急だ。
ピッケルのハーネスがうまく刺さらない。気温が高くって、雪が融け、それが凍り付いた上に20cm程の新雪がのっている、って感じ。
ハーネスでその新雪の下の氷を割れないところがある。
これはまずいべ、と隠し持っていたアイスハンマーをザックから取出し、その軽くて短いアイスハンマーを左手に、Wピッケルのスタイルになった。
このアイスハンマーを取出すのも傾斜の急なところなのでかなり緊張する。
それでも上に行くほど更に傾斜は増す。雪庇の下あたりからは、「気を抜くなーッ」「ハイーッ」と独り大声出しながら、完全に3点確保状態で身体を動かしていった。
雪庇の下では右へ2m程トラバースし、最後はピッケルもハンマーもピックを突き刺しWアックスで稜線に転がり出た。
「おー恐かった!!」終始雪がしっかり踏み固められたバケツを歩いてきたのに、最後のこの壁だけ、氷の上の新雪とは、意地の悪いルートだ。
山頂から見降ろす白馬主稜
山頂から見る剣
登り切ったところは白馬の頂上そのもの。
ちょうど8時間の行動だった。お疲れさん。
正面左手には、気のせいかあの剣が小さく見える。
足下、清水谷も柳又谷もスキーには気持ちよさそうなカールだ。もっとも、気持ちよく滑って降りた分、登り返しがしんどいだろうが。
それより下は、傾斜は落ちるが、膝までもぐるラッセル。堪忍してよ~。
それでも、スキーやボードで滑る人たちが15パーティぐらいあえぎながら登っていくのを見ると、やっぱり下りは楽である。
白馬尻まで下ってきてもやっぱりテントは誰も張っていなかった。小日向の尾根側に2張りやっと見つけた。
朝は暗くって見えなかった金山沢は本流との間は完全に雪が消えていた。パッと見、ロープがないと降りれない?と感じる出合だ。
仮に本流まで降りてもものすごい水で、徒渉は無理。白馬尻側へ少し溯行して、雪渓の上を渡ってくるしかないだろう。
一昨年に比べると、このあたりは断然雪は少ない。