【山 域】奥秩父・鶏冠尾根 第3岩峰まで日帰り往復
【日 付】2013年2月10日
【時 間】西沢渓谷入口駐車場 7:30 西沢・東沢分岐 8:05 鶏冠沢出合 8:20
1425m 9:15 1680m 10:30 1738m 10:50~11:00
主尾根=チンネのコル=1820m 11:40 第1岩峰基部 12:30 第2岩峰基部 12:50
第3岩峰基部 13:20~13:35 第3岩峰頭 13:45 第3岩峰基部 14:00~14:10
第1岩峰基部 14:45 チンネのコル 15:10 1738m 15:30 1680m 15:40
鶏冠谷出合 16:35 西沢・東沢分岐 16:45~17:00 駐車場 17:30
【メンバー】単独行
ルート(地図をクリックで拡大表示します)
あと10日もすれば再入院となり、しばらく山もおあずけになってしまう。
昨年2月に、右足クルブシの内側の太い骨と外側の細い骨の両方を骨折して5ミリほどずれていたのをプレートで補強する手術をしてもらった。
その抜釘手術が10日ほど先に控えている。
再手術を受けるとまた半年ほど山には入れないだろうから今ここで満足のいく山に入りたかった。
灯油18Lを持っても右足は痛いのでとてもテント担いでという山は入れないが、
幸い、先月の富士御坂山塊の毛無山と丹沢のサンパチ尾根を一人ラッセルしてみて、
この程度の雪ならまだ一人でも登っていく力があることが分かったので今回は標高差850mと少々キツイが、最後の岩峰登りを楽しみに頑張っていって見た。
岩峰は、登るのは良いが、さすがに下降にはロープが要ると少々重いが30mの補助ロープを担いでいった。
結果は、全く人には出会わず、たった一人気持ちの良い山を満喫させてもらった。
西沢渓谷への吊り橋
戸渡新道入口
西沢と東沢の分岐
吊り橋から見る鶏冠尾根
残念ながら鶏冠尾根は雲の中
東沢に架かる釣り橋からよく見えるはずの鶏冠尾根は、残念ながらまだ雲が切れない。
吊り橋を渡り西沢との分岐で毛糸の手袋からオーバーミトンに履き替えた。
こんな寒い時期の沢筋のハイキング径はツルッと滑って怖いのじゃないのと思っていたので、西沢のハイキングコースにも足跡が残っていたのには少々驚いた。
東沢の氷瀑に向かう人の足跡も意外と人数が少ないように感じた。
東沢の河原
鶏冠谷の出合
東沢の河原のトレースは膝ラッセルほどの深さで続いていた。
日影の沢筋とは言えここでこの深さでは鶏冠尾根は下手すると腰ラッセルの可能性が出てきた。
そうなるととても今日は岩峰にまでたどり着かないとあきらめの考えも脳裏をかすめる。
鶏冠谷出合でトレースは当然乙女の滝方面へと続いていて、鶏冠尾根側には誰も入っていない。
トレースが有れば山登りとしては楽に違いないが今日は一人山に浸っていたいから一安心する。
長い尾根の始まり
鶏冠谷を30m程も入ると左の尾根へジグザグを切って登る様になる。
膝ラッセルなのでジグザグの2回目の折り返し点でチェーンアイゼンを装着した。
谷底から20m程の尾根に出ると傾斜も落ち雪も踝ラッセルとなって歩きやすい。
鶏冠尾根を見る
中央部のコルがチンネのコル
時々出てくるシャクナゲトンネル
陽の当たっている所の葉っぱは開いている
ラッセルは深くはないが多少傾斜のある所もある
まっすぐ登るのはきついのでガニ股歩行の跡
陽の当たらないシャクナゲは葉を閉じている
シャクナゲの濃い所を過ぎ標高1400mぐらいまで登ってくると隣の戸渡尾根等が見渡せるようになり薄暗い鬱陶しさから解放され、ますます気分良く登っていける。
想定通り尾根上は雪が少ない。スノーシューを持ってこなかったのは正解だ。
シャクナゲも現金なもので、この雪の中では葉をすぼめて大人しく下を向いて寒さをしのいでいるが、中には陽の良く当たるシャクナゲは元気に葉を広げて太陽をいっぱい受けている。
大した傾斜もなく踝ラッセルで左右の景色を楽しみながら、時にはシャクナゲで視界を遮られながら明瞭な尾根を登っていく。
1680mコル
ここから登りはきつくなる
第3岩峰付近の側壁
しかし1690mのコルからは、ちょっと厄介になる。
コルからは尾根筋ではなく右に巻く。ここは北斜面になり雪が多く残っていて傾斜もきついので股下まで埋まる。
しかも雪質の性かチェーンアイゼンに厚さ1cm強の団子が出来る。
夏径用のトラロープが張られているが今は雪や氷の下になっていてブッシュ頼りに強引に登って尾根筋に戻る。
トラロープが目に付くようになる
径は尾根の北側を回り込むようになる
1738m乗越し点から先のトラバース径
地形図の露岩帯の弱点を追うように左上していく
スマホで現在地を確認すると標高1738m地点となっている。
ここからは左手へトラバースし、ガレ状を直上したり左上したりのルートになるが南面で暖かくほとんど雪は融けていて地形図の露岩はあっさり通過できるが、その先鶏冠尾根の主尾根に出るのが今日は厄介だった。
チンネのコルの直下
ルンゼの最上部へと入って行くがチンネの日影となるので雪がタップリ残っていて再び股下ラッセルとなる。
決して何十メートルとラッセルする訳ではないが股下だと一気にスピードが落ちる。
ピッケルもストックもないしルンゼ最上部なので樹林もない。
オーバミトンの手を直接雪に突っ込んでバランスを取りながら登っていった。
登り着いた主尾根がチンネのコルだと思うが標識などは見当たらなかった。
ゆっくりしたいところだが東のナメ沢から音を立てて風が吹き上がってくる。
今まではソヨッとも風が吹かなかったが今日は風が出ている日なんだと知らされる。
チンネのコルから先の主尾根
この柔らかそうな雪の下は実は氷
主尾根上は南向きなので雪は消えているかと思っていたが、樹林が濃いので消えている訳ではない。
多少傾斜はあるが広いスッキリした尾根で気持ちよく登っていけるが、風が強いからか雪の下は氷になっていて少しは気を遣って歩かされる。
場所によっては、スゴイ風がモロに吹き付けてくるので毛糸の帽子では寒くてアウターとして着ているレインウェアの帽子も被って風を避けるがこれ以上冷たい風だとレインウェアでは厳しかったかも知れない。
この付近は原生林なのだろう、丹沢の植林で手の入った不自然な尾根と違って人の手を感じさせない尾根歩きは本当に癒される。
第1岩峰の直前
この左側の赤テープに導かれて左から巻きに入ったのだが・・・
その主尾根を30分ほど登っただろうか尾根筋は急になり赤テープに導かれて左(東のナメ沢側)へ巻くように進むが尾根への登り返す斜面が僅か3m程だがひどく急で雪を払いのけると下は透明な氷だった。
本物のアイゼンなら蹴り込めそうだがチェーンアイゼンでは無理な話しだし、
僅かに3m程なので履き替える気にもならない。ここでピッケル出す気にもならない。
右手にはしっかりした木があるが左手で掴むものは無し、足場もない。
すぐ上に赤テープはあるが登れそうにないので元来た側へ少し戻り、雪の付いていない壁に取り付いてみたが、人が登った様子は丸でない。
これも諦め更に右の元来た側へ回り込んで尾根上を覗いた。
登れなくはなさそうだが浮き石を掴んで落ちそうなのでこれも止めて結局最初の氷の壁へ戻ってきた。
で、右側の木に両手でぶら下がって完全な木登りとなってしまった。
今日のルート中一番厄介なところだったし、帰路はロープが必要になるのかしらと煩わしくなる。
第1岩峰
尾根上に出るとそこが第1岩峰の基部だった。
見ると反対斜面(鶏冠谷側)に古い赤テープがあった。
もしかしてこの鶏冠谷側の樹林の斜面が本来のルートだろうか?
ようやくここで樹林から抜け出し南の空が見渡せる。
道志から丹沢山塊がよく見えるが、特徴がないのでどのピークがなんという山か分からない。
すぐ前は黒金山の後に白い富士山が大きい。
第1岩峰の下で予定通りチェーンアイゼンを脱ぐ。
第1岩峰は45度程度の傾斜の露岩で左側がスッポリ切れ落ちていなければ鎖は必要なさそうな感じがする。
風が強いから雪は全く付いていないし、南面なので陽当たりが良く乾いた岩だ。
オーバーミトンのまま登っていく。
第1岩峰から見る鶏冠山
中央が第3岩峰の壁
第2岩峰は足下で写っていない
登り切るとやっと鶏冠山まで尾根筋が見渡せる。
第3岩峰をアップで
第3岩峰から上、鶏冠山への岩稜
ここを登れば楽しそう
鶏冠山から東のナメ沢へ落ちる胸壁
これだけの壁が地形図に示されていないとは・・・
金山沢から国師ヶ岳
左下は乙女の沢
第2岩峰
鎖を無視して正面から行くのが簡単
チェーンアイゼンを履き直して少し下ると第2岩峰の取り付きだった。
鎖とトラロープが右側の壁に下りているが正面カンテ上の方がはるかに登りやすそう。
チェーンアイゼンを着けたままアイゼンの爪が岩のかからないようにビブラム底のつま先で細かなスタンスに立ちこんでいけるほどホールドはガバ続いている。
もう引き返さなければならない時間だが折角第2岩峰まで来たのだからヘッドランプ下山も覚悟して先へ進むことにする。
左右に切れた細い尾根で1m立方の石がゴロゴロ続いているって感じで、残念ながら岩稜とか雪稜とかいう形状ではないがキツイ風が雪山ムードを盛り上げてくれる。
やっと第3岩峰に到着
そんな細い石尾根も暫くで樹林帯になりコルまで下って少し登り返すとやっと第3岩峰の取り付きまでやってきた。
この壁を登れば今日の目標到達点になる。
山梨県警に提出してある計画書にも、第3岩峰を登るまで、と明記してある。
ところが他の人の記録ではこの壁のルートがよく分からない。
まずはそのルート探しから始まった。
まず、中央の立木を背にして細いクラックを正面突破するルートを試みた。
思いっきり右に振って左足をクラックの細かいスタンスに乗せるムーブでいけそうに思えるが、多く皆さんがこんなシビアな登りをされたとはとても思えない。
取り付に戻って右に回り込み、凹角を覗いてみたがこれも違うみたい。
残るは、左側だけだ。左は、一歩離れた岩に乗り移って行かねばならず、その岩には雪が積もっていたので足で払い除けてから体重移動して覗き込んだ。
すると右上へと緩傾斜の岩が続いてる。これだ。
再び、取り付に戻って、チェーンアイゼンを脱ぎ、ザックからロープやシュリンゲ、ATCなど下降用道具を取り出し、直接肩にかけて登って行った。
背中に太陽を受けながら気持ちよく登らせてもらうとラッペル用のピンがあり、すぐに登攀は終了した。
たったこれだけ?と言う感じがする。一日人のお手伝いをしてお駄賃が菓子パン一個、って感じネ。まぁそれが道楽というものでしょう。
もう一段上へとトラロープがあるので登ってみたが、その先は藪尾根が鶏冠山へと続いているだけだった。
本日の登りはここまででと写真だけ撮って、一段下のラッペル地点へ戻った。
懸垂には新しく捨て縄をセットし直して、ハーネスは嵩張るので持ってこずテープシュリンゲでシットハーネスを作ってATCで下降した。
30mロープをダブルにした15mちょうどで取り付きまで降りてこられた。
これだけだめの為に重くて嵩張る30mロープをここまで担いできたが予定通り使えて満足だ。
左から覗き込んだ目印
ルートは写ってはいない右側へ
登り終えた第3岩峰の壁を見下ろす
ここからラッペルで下ります
鶏冠山
西沢渓谷入口駐車場方面を俯瞰する
第1岩峰を見下ろす
お腹も空いたしゆっくりパンなど食べたいが下山の時間がおしているのでアミノバイタルでドーピングしただけで登攀具を片付け、チェーンアイゼンを履き、第1岩峰の下の氷の斜面を下る時ようにとお助け紐を持って、急いで下山を開始した。
帰りは登路の足跡が雪の残っているのでルートを探さなくても済むので速い。
第2岩峰から見る第1岩峰
第2岩峰の下りは鎖を頼りに下ったが、やっぱりここは鎖場の方がよほど登りにくい、カンテ側の方がはるかに簡単だ。
第1岩峰から見る第2岩峰
第1岩峰から振り返る第3岩峰・鶏冠山・木賊山
第1岩峰のテッペンでこれで景色も見納めだと写真に撮り、正面の富士山に挨拶して、来た径通りに東のナメ沢側へと進み、お助け紐をセットして左手に絡ませ右手は登りと同じ木につかまりながらズリ降りた。
尾根筋を下降するが、氷の上に雪が乗っているのでチェーンアイゼンでは氷まで歯が届かないらしく時折滑るような感じがする。
時々は雪団子が付いていないか確認しながら先を急いだ。
チンネのコルの下のルンゼ
この辺りは雪が深かった
良い感じのスピードでチンネのコルまで来たが、まだ気を引き締めて下降せねばならないところが先にあるので休憩を取らずに先を急いだ。 登りで股下ラッセルになったルンゼ上部は、往路と同じ足跡通りに足を入れて下降し、まだ明るい露岩帯を一気に下降して1738m乗越し点に戻ってきた。 これより急な北斜面は立木にぶら下がりながら下り、腰ラッセルの跡を忠実に辿って1680mコルにまで降りてきた。 これで一通りヤバそうな所は終わった。
この辺りまで下ってくると足は速い
もう太陽は西に傾いた
ここまでは何とかして明るい内に降りてきたかったので正直ホッとしたが、ついでに明るい内に鶏冠谷出合まで行ってしまおうと横にずれたアイゼンを履き直しただけで休憩せずに下降した。
気持ちの良い歩きやすい尾根を早足で下降しながらフト思った「それにしてもよくこんなに長い尾根を一人ラッセルしていったものだ」と。
鶏冠谷を見下ろすジグザグ径
そんなことを感じるほどに結構長い尾根が続いて右下に東沢の沢芯が見えてくると尾根から離れて左へ向かい鶏冠谷の河原に降り立った。
東沢出合まで下ってきた
有りがたいことにまだ明るい。もう一息、西沢の分岐まで進んで休憩をする。
西沢渓谷との分岐
もう安心と休憩する
西沢分岐のベンチにザックをおろし、第3岩峰の取り付で食べたかったあんドーナツをやっと食べ、紅茶を飲み干して、チェーンアイゼンもザックに戻し、ヘッドランプだけはいつでも出せるようにアウターのポケットに入れて駐車場へと歩き出した。 もうここからは日が暮れても大丈夫、とゆっくり歩いたが有り難いことに何とか明るい内に車まで戻ってこれた。
【チェーンアイゼン】
Snow Line という好日山荘で買ったチェーンアイゼンを履いている。
具合が良い。
アイゼンを履いているという感じが無く、普通にビブラム底で歩いている感じがする。優れものだ。
この冬買ってこれで4回目の山行となった。
ただ今回は使い方が想定外だったのか2~3まずい点に気が付いた。
まず、雪質次第で雪団子が付く。まぁ厚さ2cmはない程度の団子なのでバンと堅めの雪を蹴りこめば取れるが・・・
次ぎに、氷結した斜面に雪は付いているとアイゼンの歯があまりに短いので氷まで届かず滑りそうな感じの時がある。
最後に、これが一番の弱点かも知れないが
靴底にあるべきアイゼンが足の小指側に半分出てきてしまっていた。
これは、少々傾斜が急な下りで身体を横に向けて降りる場合、まず右足を下へ出し(これはまっすぐ下に向いた置き方になる)、 左足は下降線に対して直角に足を置くような体勢で下るが、 この場合、左足のチェーンアイゼンには前後ではなく横(親指のつけね側から小指のつけね側)へ滑り止めの力がかかる。 その結果、靴底から離れて小指側にずれてしまっていた。そんなケースが3回ぐらいあった。
Snow Line 以外のメーカのチェーンアイゼンで足の甲の部分を絞めるベルト付きの物を2種類ぐらい見たが、どうやらこの横ずれ防止のベルトだったようだ。
ということは、この手のチェーンアイゼンも結構使われて進歩しているのかも知れない。